カスタネットの秘密

小学生の頃、背が小さくて、着ている服もだらしなく、勉強もあまりできず、どちらかというと、同級生からは常に馬鹿にされいている「デコ」というあだ名をつけられていた子がいた。

デコは授業中、先生に質問されても答えられない。
デコは足も遅く、スポーツをやってもどんくさい。チーム分けをするときには、どのチームもデコをいれたくなかった。

でも、デコは、まじめだったし、素直で、いいやつだったので、心の中で馬鹿にするやつも、彼を虐める事はなかった。

あるとき、音楽の授業で誰がどの楽器を担当するか決める日があった。
花形は木琴・ピアニカ。トライアングルも音色で好まれた。数の少ない楽器から決まっていき、どの楽器にも選ばれなかった子はカスタネットにされた。

デコは、当然のようにカスタネット。

そして、担当楽器がきまって曲の練習が始まった。

その時、音楽の先生が練習を止めて、デコに言った。

「デコ君は、本当にカスタネットが上手だね。誰でもカスタネットはたたけるけど、デコ君のように上手にたたける子はいないよ。」

デコは黙っていたけど、ものすごくうれしそうな顔をしていた。

しかし同級生は「なんで?カスタネットなんて、たたくだけで、誰がやっても同じじゃないか。先生がデコに気をつかって言っただけだよ」と、デコのいない所で嘲笑っていた。
私も、カスタネットは誰がたたいても同じだよ。そう思っていた。

ところが、デコはそれがとても嬉しかったらしく、それから、休み時間の間はいつもカスタネットを叩いてた。

カタカタカタ、カタッタ!

そして、次の楽器選びの時、デコはカスタネットの腕をまた褒められて、今度はシンバルに昇格した。

みんなも最初は、え?え?と思っていたけど、
トライアングル、太鼓と、デコが昇格していくにつれ、打楽器はデコが一番うまいという評価に変っていった。

デコは、あいかわらず勉強はできないし、どんくさい子だったけど、みんな打楽器をやらせるならデコだなと。彼の陰口をいう子はいなくなった。

中学になり、デコは吹奏楽部に入り、やっぱり打楽器を担当した。
高校でも打楽器を担当をし、コンクールの入賞に大きな役割をはたした。

そして、高校卒業後、彼は、消防所に入り、地元の県で有名な消防音楽隊に入った。

デコは皆に、「あいつ凄いな!」って言われるようになった。たぶん、彼は今でも打楽器をたたきながら、幸せにくらしていると思う。

彼を変えた魔法の一言
「本当にカスタネットが上手だね。誰でもカスタネットはたたけるけど、君のように上手にたたける子はいないよ。」

人は褒めてあげることで、自分では気がつかなった力を発揮する事があるんですよね。
今もあのときの先生の言葉を時々思い出します。






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